新年度の始まりに考える、目ざすべきイノベーションの姿
新しい年度が始まるこの時期は、新社会人となるスーツ姿の若い人たちの姿を街のあちらこちらで見かけます。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中止やオンライン形式で行われた昨年から一転、今年は感染予防対策を徹底し、従来通り集まって開催している会社も多いようです。
今年の入社式における各社の経営者によるトップメッセージを読んでいますと、業界問わずイノベーションを起こすことへの期待が語られています。
「多様な考え方や個性を大切にしてイノベーションの原動力になってほしい」(トヨタ自動車)
「真のダイバーシティが発揮されてこそイノベーションは生まれる。是非、新しいイノベーションの風をどんどん巻き起こしてほしい。」(資生堂)
「イノベーションは、当社の最も重要なポイントといっても過言でない。・・・あらゆる仕事でイノベーションを起こしてほしい」(中外製薬)
事程左様にイノベーションの必要性が叫ばれるのは、やはり喫緊の課題であるからだと思います。
今までと同じような考え方や手法、働き方をしていてもこれまでの路線の延長です。
特にコロナ禍のように予見し得ない状況が発生した際は、従来のやり方一辺倒ではうまくいかないことを、私たち全員が経験しました。
その一方で未曾有の危機が、新しい技術やイノベーションが生まれるきっかけになりうることも、この一年の生活から感じたのではないでしょうか。
これは個人的な話ですが、Zoom、Ovice、TeamsやSlackなど、コロナ禍までほとんど使ったことがなかったばかりか、聞いたことすらなかったアプリやサービスも、今は毎日のように使用しているものもあります。
しかし一口でイノベーションといっても、切り口やとらえ方で意味合いは大きく異なります。
今、目指すべきイノベーションとは、具体的にどういったものなのでしょうか。
答えは私たち一人ひとりがそれぞれで考える必要がありますが、本日はそのヒントになる一冊をご紹介します。
『イノベーション全書』 紺野登 著
多摩大学大学院教授でデザイン思考のパイオニアでもあり、建築家のバックグラウンドを持つ著者の紺野先生によると、今求められているのは「人間のための人間によるイノベーション」だといいます。
具体的には、
・人間の本質、幸福や生き方のために(for human=実存的人間)
・人間の生きる社会を基盤に考える(on human=市場や業界や製品を基盤にするのではない)
・それを行うのも人間(by human = 社会的、組織社会の人間)
イノベーションとは「人間が新たな観点に基づいて、世界を生み出していく物語りの行為」であると紺野先生は言います。
他者のストーリーをなぞるのではなく、オープンな対話を通じて多様な観点を収集し、社会との共感をもとにチーム、場を創り出し、目的・目標標に落とし込み、物語りつつ実践する行為であると。
大事なのは私たち一人ひとりが、それぞれ意志を持って行動し、「世界」を変えることを意識すること。
また東洋経済の関連記事では、「人間のための人間によるイノベーション」についてこう述べています。
「結局、『私』(読者)が、ある意志を持って行動するから、『世界』が変わる。その主観や共感の行動が、どれくらいインパクトを生み出せるかがカギだ。周囲の人々はそれを見て、思考や行動を変えていく。つまり、『生きる』ようにして、日々のイノベーションに関わることが求められている。」
イノベーション概念全般について学びたい若い社員の方はもちろん、あらためてイノベーションへのアプローチと方法論を実践的に学びたい方もおススメです。
古代ギリシャから現代の最新イノベーション理論までカバーした、多彩なガイドブックとしても活用できます。
ぜひ書店でチェックしてみてください!
季節の変わり目でもありますので、健康管理に十分気を付けて頑張っていきましょう。
以 上
(中央区・新川の桜)