「人生100年時代、MOOCのすゝめ」
最近メディアなどで「リスキリング」「リカレント」といった学び直しに関する記事をよく目にするようになりました。
新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要な知識やスキルを獲得することが求められてきています。
人生100年時代といわれますが、今持っている知識やスキルだけでは今後のVUCA時代に通用しなくなるのではないか、と多くの人が不安感を持っています。
実際、これまでのように会社や組織が敷いたレールの上を定年退職まで歩き続けていけばよい時代は終わり、自らのキャリア人生のために、自ら選び取って学び続けていくことを政府も求めています。
昨年6月に内閣府が定めた『経済財政運営と改革の基本方針2021』では、今後の成⻑を⽣み出す原動⼒を⽀える基盤づくりに、イノベーションの促進、多様な働き⽅の実現などに並び、「リカレント教育等⼈材教育の抜本強化」を主要な柱の一つに挙げています。
また文科省は、そのリカレント教育が必要な理由として、
・人生100年時代においては、教育、雇用、退職後という伝統的な3ステージの人生モデルから、マルチステージのモデルに変わっていく
・2030年頃は、IOTやビッグデータ、人工知能等の技術革新が一層進展(第4次産業革命)し、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く、人類史上5番目の新しい社会「Society5.0」の到来が予想
の2点をHPで挙げています。
そんな学び直しですが、代表例としては外国語、プログラミング、MBAなどが人気があるようです。
英語の需要はこれまでも高かったですし、今後はインターネットやSNSの普及で日本にいながら海外市場でインパクトのある仕事をすることも可能になったこともあり、必要はさらに高まるものと思われます。
プログラミングはAIやIoTがさらに進むのを受けて、デジタル人材の需要が高まっていることはこちらのHPでも以前触れました。プログラミングスキルを必要とする職種は、時間や場所に縛られない働き方がしやすいというメリットもあり、子育てや介護など個人個人のライフステージの変化に合わせて学び始める人も多くいるようです。
MBA(経営学修士)についてはこれまでは実際に海外の有名校で学ぶのが主流でしたが、最近ではコロナ禍を受けて多くの大学がオンラインでプログラムを提供するようになってきています。
いろいろな選択肢がある中で私が個人的にお勧めするのは、MOOCの活用です。
MOOCとはMassive Open Online Courseの略で、大規模公開オンライン講座のことです。オンラインで誰でも無償で利用できるコースを提供するサービスで、希望する修了者は有料で修了証を取得することもできます。 世界トップクラスの大学・機関からさまざまなコースが提供されています。
余談ですが、最近では国内eラーニング市場規模は2,880億円以上になるとの見立てもあります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠隔地での教育の需要が高まり、法人向けと個人向けの双方で利用者数が増えているようです。この流れはさらに加速し、世界規模で見ると2026年には40兆円規模のビジネスになるとの見立てもあります。
さてそのMOOCですが私もこれまでよく活用してきました。
最近はこのコロナ禍で直接人と接することが少なくなったと感じたので、プロジェクトマネジメントの力をつけるためにもその必要性を感じ、「リーダーシップ」学のコースを受講しました。
NHKの『白熱教室』シリーズをご存知の方もいらっしゃると思います。
世界の一流校の名物教授による授業を視聴者にもわかりやすく説明しながら学ぶという教育番組です。シリーズの一つにハーバード・ケネディスクールのロナルド・ハイフェッツ教授による「リーダーシップ」に特化した授業がありました。
以前からこの番組のファンでもあったので、特に感銘を受けたハイフェッツ教授による『Exercising Leadership: Foundational Principles』というコースを受講してみました。
リーダーシップの定義から始まり、なぜ我々はリーダーシップを必要とし、どのように行使すればよいのか、そしてその効果をいかに測るのかまで、包括的にかつ自分自身の経験を振り返りながら学ぶコースでした。自分にとって素晴らしい学びになりました。
このプログラムは、マサチューセッツ工科大学とハーバード大学によって創立されたedXというプラットフォームから提供されています。
このedXではこれらアイビーリーグ大学を始めとした世界中の名門大学に加え、IBMやGoogleといった企業が実に多様なコースを提供しています(日本勢からは東大・早稲田・東工大などが参加しています)。
皆さんも年度末のこの時期にこの一年を振り返る時間を持つと思います。
この一年をレビューするだけでなく、少し長い目でこの先のキャリアでどういった知識が必要になるかも考えてみるのも大事かもしれません。
単なる学び直しに止まらず、新しい知識を得ることでキャリアの可能性を広げることにもつながる気がします。
その際、MOOCの活用をお勧めしたいと思います。
多くが無償ですし、暇な時間にスマートフォンのアプリを通してのぞいてみるだけでも学ぶポイントをたくさん見つけられると思います。
◆参考記事:
ハーバードの授業が無料で受けられる?おすすめMOOCサイト6選
https://note.com/snowleopard/n/n233044c5b1b1#1VMxb
副業や休暇増、学び後押し 企業価値高める工夫広がる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD083QZ0Y2A300C2000000/
文部科学省におけるリカレント教育の取組について
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/koyou/20200409/200409koyou03.pdf