「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」：体験から考える社会課題

北京2022年パラリンピックが開催されています。メダルの数は現時点、中国、ウクライナに続いて日本は第3位につけています。
選手たちは障害を抱えながらも、素晴らしい活躍を見せてくれています。

先日、ダイアログ・イン・ザ・ダーク（DIALOGUE IN THE DARK）というある画期的なプログラムに参加してきました。

1988年、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ、これまで世界50か国以上、800万人を超える人が体験しています。

日本では1999年に初開催し、これまで23万人以上が体験しています。ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

純度100%の真っ暗闇の中で、見ること以外の感覚を使い、チームで様々なシーンを体験していくプログラムです。
体験を案内してくれる視覚障害者のガイドさんのもと、参加者は視覚以外の感覚を広げ、普段の生活では意識していない感覚をフル活用しながら、日常生活の様々なシーンを疑似体験していきます。

私が今回参加したのは、ゆりかもめ線・竹芝にあるダイアログ・ミュージアム「対話の森」の施設でのプログラムでした。
全体で90分ほどの時間でしたが、チームとなった仲間たちといっしょに暗闇の中、施設内をぶつからないように移動する、ゲームをしてみる、電車に乗る、家に入って炬燵に入る、といった普段なら意識すらしないような体験も、視覚を使えない状況ではいかに困難かを学びます。

暗闇の中ではお互いのコミュニケーションは声を掛け合うことが基本になりますので、初対面の人とも積極的に自分の進みたい方向や、したいことを言葉にする必要があります。
必然的に丁寧なコミュニケーションが求められます。

こうした特長はそのままビジネスシーンにも生かせることばかりだということで、最近では企業研修向けに活用されることも多いそうです。暗闇の中ではお互いが助け合わないと先に進めないので、普段の組織内での役割や職位による力関係もフェアになるといいます。
実際、プログラムを受けた後で、参加者の仕事の生産性や職務への適応を示す指標である「情動知能」が向上したという結果も出ているそうです。
たしかに暗闇の中での活動には、チームビルディングやコミュニケーション、お互いへの気遣いなど、どれも仕事に必要なポイントが散りばめられている気がします。

こうした学びに加えて今回思ったのは、すべての人が暮らしやすい社会を作ることがいかに難しいかです。
実際に体験してみて分かりましたが、電車に乗ること一つとっても、乗車する車両のデザインが旧型か新型かで、ドアから座席までの距離や配置、通路の狭さ、手すりの高さや触感、など普段は意識しない様々な「当たり前」が異なってきます。

「多様性の尊重」と口ではいうのは簡単ですが、私たちはどれほど自分事として受け止めているでしょうか。

社会課題の解決には包括的な観点と、柔軟なアプローチが求められることを強く認識させられました。

まだ体験されていない方はぜひ一度参加していただきたいです。
本当の意味での、社会課題の解決へ向けたヒントも得ることができると思います。
強くお勧めします。

◆ダイアログ・ミュージアム「対話の森®️」
https://did.dialogue.or.jp/　
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/

◆参考図書：
『暗闇から世界が変わる ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦 (講談社現代新書) 』
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210792