スタートアップが成長しやすい環境とは - 欧州の課題から見えること
2020年9月ソフトバンクグループは、傘下の英半導体設計大手アームを米半導体大手エヌビディアに売却すると発表しました。
売却額は最大400億ドル(約4兆1000億円)と、世界的にも大きな話題となりました。
アーム社は携帯電話のマイクロプロセッサーで支配的な地位にある、最も有力なテクノロジー企業の一つとされます。
そんな中、BBCの名物インタビュー番組「Hard Talk」に、ハーマン・ハウザー氏が昨年末登壇しました。
このハウザー氏はヨーロッパを代表するテック系投資家であり、渦中のアーム社の共同創業者でもあります。
この番組は登壇者に厳しく鋭い質問をすることで知られ、ゲストはいつもたじたじとさせられます。
番組ではアームのエヌビディアへの売却を初め、昨今のベンチャー環境や行政サイドに求めること、今後のテックマーケットについて様々な質問に答えています。
中でも、欧州のスタートアップ事情が抱える課題について述べており、その鋭い指摘が特に印象に残りましたのでご紹介します。
司会者から、なぜ欧州のベンチャー企業は中国勢(HUAWEI、ALIBABA等)や米国勢(GAFA等)のような巨大テック企業に成長できないのかと聞かれ、欧州勢の企業は特に(スタートしてから一気に成長し始める)「スケールアップ」の段階に課題があると答えています。
ハウザー氏によると、
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具体的には次の三点により、欧州市場では新しい巨大テクノロジー企業が成長しにくいと考えている。
①欧州は市場規模も大きくないうえ、言葉の面でも文化の面でも、調和のとれた均一市場ではない
・アメリカや中国のように、単一フォーマットで進めることができない
②アメリカや中国では、国からの投資額が比較できないほど大きい
・欧州とは違いこれらの国々は新しいテクノロジーへ投資する潤沢な用意がある
③そもそもGoogleやFacebookのようなGAFAクラスの企業がないこと自体がすでに課題
・欧州でも会社が成長し、ある一定の規模までは自分たちでマネジメントできるが、さらに伸びて何千億規模になったときにマネジメントできる組織も人材もなかなかいないのが実情
・しかしアメリカのシリコンバレーであれば、Apple社やGoogle社ですでに同規模をマネジメントしている人材にお願いすることができる
・彼らは柔軟でスピーディーに動けることもあり、欧州勢の企業から「自社株を分けてあげるから頼みたい」などとオファーすればお願いできてしまう
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これらの指摘は、たとえばアジアでどうすれば次なるGAFAを生み出せるかといった点を考える上でも参考になると思います。
ご興味をもった方は、ぜひ下記の番組も聞いてみてください。
参考:
Hermann Hauser: Is Europe failing to create tech champions?
Facebook, Amazon, Huawei, Alibaba. All American and Chinese. Where are the Europeans? We speak to an entrepreneur who has profoundly shaped Europe and the UK’s technology sector.
https://www.bbc.co.uk/programmes/w3cszc2y