テレビ越しに考える東京の今昔
開幕前のオリンピック競技会場の建築を見学する機会があり、そこで得た気付きについてはお話ししました。
そこからあらためて「東京」という都市の成り立ちについて考えていました。
特に戦後の復興期から現在に至るまでに、どのような変遷をたどってきたのかについてもっと知りたいと思っていたところ、参考になる本を見つけました。
本日ご紹介の一冊はこちらです。
『テレビ越しの東京史 ―戦後首都の遠視法―』 松山秀明 著
前回記事に投稿した写真をご覧いただくと伝わると思いますが、新設された各会場は、その大きさや高いデザイン性、建築方法まで素晴らしかったです。
個々の建築物としてもそれぞれとても立派で、ここでプレーする世界中の選手たちはこれら競技場を見るだけでも、なるほどこれが「TOKYO」かと興奮したことと思います。
一方でオリンピックという世界でも、もっとも大きな大会を開催しながら、緊急事態宣言下にある異例づくめの都市、これも「東京」です。
実際先日は、日本代表チームのサッカーの試合が放送されている隣のチャンネルで、まさに同時刻に政府首脳が緊急事態宣言について会見を行っていました。
そんな東京を本書ではストレートにこのように表現します。
「東京は語りにくく、掴みどころのない、茫漠とした都市である」
「東京は語りにくく、掴みどころのない、茫漠とした都市である」
二度のオリンピックをそれぞれ全く異なるシチュエーションで開催することになった東京を、テレビというメディアから紐解いていくのが本書です。
1953年に始まったテレビは、戦後の社会形成においてどのような役割を果たし、東京という都市を形作るのにどんな影響を及ぼしてきたのか。
この特異な都市が形作られてきた経緯を、テレビの発展の歴史から考えさせられる一冊になっています。
思えば物心ついたころから当たり前のように居間の真ん中に鎮座してきたテレビですが、一方では最近では「テレビ離れ」といった言葉も耳にします。
折しもオリンピックゲームもテレビで観戦するのが当たり前となったこの夏、もう一度このテレビが私たちの社会で果たしてきた役割について考えてみるのもおもしろいかもしれません。
都市デザインを考える上ではもちろんですが、都市におけるイノベーションについて考える上でも参考になる一冊です。
気になった方はぜひ書店でチェックしてみてください。
感染者も増加傾向にあり、さらに暑い日が続きます。
健康管理に十分お気を付けてお過ごしください。