ALL REVIEWS 巻頭言から:帝国とフードグローバリゼーション

世の中にファーストフードと呼ばれるもの数あれど、「もっともグローバルな」というタイトルがついたとき、やはり代表格は「マクドナルド」で間違いないと思います。

ロシアではすでに多くの世界的ブランドや多国籍企業が国内事業の停止、あるいは売却などを進め完全撤退に至っています。

米マクドナルド社も5月、戦争による「人道危機」と「予想できない運営環境」を理由に、ロシアからの完全撤退を発表しました。

BBC記事によると昨年のマクドナルドの世界売上高のうち、ロシアとウクライナでの売上は実に約9%を占めていたといいます。

さて、マクドナルド社が去った後、ロシア国内に残された800以上の店舗はどうなったのでしょうか。

もちろんハンバーガー文化もともに無くなるということはなく、あるロシア人実業家が買い取りました。

今度の名称は「フクースナ・イ・トーチカ」で、「おいしい、それだけ」という意味だそうです。

そして今月の12日、ブランドを一新した店舗がすでにモスクワで営業を開始しています。

店内には「名前は変わっても愛情は残る」というスローガンが掲げられているのだとか。


今週の書評選に『イギリスが変えた世界の食卓』という食文化史の本が取り上げられています。

帝国とフードグローバリゼーションについて書かれたとても興味深い本です。

サイトで著者・トロイ・ビッカムによる「はじめに」の一部を読むことができます。

その中に人間は個人であれ共同体であれ、常に食べ物に意味を付与する習慣を持って生きてきたと書かれていました。

たとえば、歴史を通じて上流階級が自分たちの豊かさを見せつける際に用いたのものの一つが、食べ物であったと。


また、「食べ物の研究から浮かび上がってくるのは、変容する国家の姿である」とも説いています。

その帝国の隅々からイギリスに入ってきた食べ物や異なる食文化を通して、イギリス人は世界中の文化と出会う機会を得たといいます。

文化の違いは、研究し、体験し、ときには称賛すべきものとして扱われ、互いへの理解を深めるきっかけになったのだそうです。


皮肉にもモスクワのマクドナルドの後を継いだ企業が、開店記念イベントを開いたのは32年前、ソヴィエト連邦時代の1号店が開かれた場所でした。

1990年1月、マクドナルドがモスクワにやってきたのは、手軽で美味しい食べ物を通じた西側の豊かさや文化を、ソ連が受け入れたことの象徴だったはずです。


今、世界がこのような状態にあり、時代が大きく変わってしまっているのを感じます。

名前が変わっても残るもの、とは何なのでしょうか。あらためて考えてみたいと思います。


今週は他にも、超大国や東西の大帝国について書かれた本が多く選ばれています。


ぜひ素晴らしい書評の数々をチェックしてみてください。


Fabio


https://allreviews.jp/review/




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