【本の話】『世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと』
このコロナ禍で、今年の上期は今までと全く異なる働き方となりました。
先が見えない不安が広がる中で、目の前のことに集中することさえ大変な状況だった、という方も多いのではないでしょうか。リモートも増えてこれまで通りの仕事の進め方ができなくなったわけですから、当然といえば当然です。
あらためて振り返ってみると、生産性にも大きな影響が出た6か月だったと思います。
そこで、今日は生産性について深堀していきたいと思います。
The Writer Files というポッドキャストの番組があります。
創作方法についていろいろな作家にインタビューをしながら、テーマを掘り下げていく内容になっていて、通勤時など私もよく聞くプログラムの一つです。
9月23日の回に登場したのが、今回紹介する本の著者、クリス・ベイリー氏でした。
ベイリー氏は生産性向上に関する分野ではよく知られたコンサルタントで、TEDにおけるプレゼンテーションも高い評価を得ています。
この日のポッドキャストのプログラムでも、日々忙殺されがちな毎日の中でいかに生産性を上げることができるか、特にこのコロナ禍においてどう生産性を上げられるか、について自身の体験やリサーチを基に丁寧に解説していました。
特に印象深かったのが、瞑想が創造性や生産性を上げることに役に立つという部分。
呼吸に集中して、吸ったり吐いたり、吸ったり吐いたり、だけに意識を持っていく。
普段は何気なく行っている「呼吸」に意識を持っていく。
「呼吸」をするということほどつまらないことはない、と彼はいいます。
ただ、そのつまらない時間をあえて持つことで、瞑想後の活動に大きく影響が出るといいます。
つまり、何をするにしても呼吸よりは、どんなことも楽しい。
これには膝を打ちました。
なるほど、その通りかもしれない。
呼吸、は普段の生活では意識することもありませんからね。
調べてみると彼の『Productivity Project』という本が2017年にすでに日本語にも翻訳されていることが分かり、早速読んでみました。
『世界一の生産性バカが1年間、命がけで試してわかった25のこと』
この本は著者が1年かけてあらゆる方法で生産性を上げてみるプロジェクト(AYOP:A Year Of Productivity)を打ち立て、自らが実験台となって実際に一つ一つ試していき、効果のほどを確認しながら、私たち一般の読者にも試せるよう分かりやすくその秘訣について書いた本です。
以下、ためになったポイントを抜粋します。
P. 90
「インターネットは生産性を奪う
インターネットは生産性を確実に低下させる。重要かつ厄介なタスクに取り組んでいるときは接続を切ろう。できるだけ長時間が望ましい。これが時間を浪費させない最良のコツだ。禁断症状を乗り越えれば、いままでになく落ち着いた気分で生産的な時間を過ごせるだろう。」
P. 208
「シングルタスクを徹底させる
一つのタスクに集中するシングルタスクは、脳がさまようことを防ぐ。シングルタスクは取り組んでいるタスクのまわりに知覚喚起スペースを作る。記憶力も増進させる。取り組んでいるタスクに絶えず集中力を引き戻すことで、集中マッスルをつくりあげることができる。」
P. 217 からは、マルチタスキングを避け、シングルタスクを実践する方法として具体的に、ポモドーロ・タイムの導入を薦めています。
- ポモドーロテクニック”は一九八〇年代にフランチェスコ・シリロによって考案された。
- まず、ひとつのタスクを選ぶ。そのタスクに二十五分集中したら五分間の休憩をとる。この二十五分を四回繰り返したあとは十五分以上の長めの休憩をとる。これがシングルタスクの実践に効く最強の時間間隔。
→ 電話会議やリモート会議もメールなどをチェックしたりせず、全集中力を向ける。目の前の人の話を傾聴する。読書中は集中して読む。食べるときは食べることに集中する・・・などなど
(これは、キッチンタイマーによく使われるような昔懐かしトマト型タイマーでもいいし、最近ではTANITAなども小型で使い勝手の良い製品を出していて私も愛用しています)
「P. 221 マインドフルネスと瞑想の効果
マインドフルネスや瞑想には、心を落ち着かせて幸せな気分をもたらしたり、集中力を高める効果もある。これらによって生産性を高めることもできる。瞑想はあなたが想像するよりもずっと気軽に始められる。」
水をたくさん飲むこと、眠りを重視することなどを述べた後、最後のまとめに下記のポイントを強調しています。
「P. 274 生産性は、幸せになろう、自分にやさしくなろうと思うと、大いに上向く。」
そして、総まとめとして、P. 274以降、自分にやさしくなれる9個のポイントを挙げています。
①もっと休憩をたくさんとる。
②ありがたいと思っていたことを三つ思いだす。
③ポジティブな体験を書き留める。
④ひとつのタスクをいくつかに分ける。
⑤自分の心の声を聴こう。
⑥自分にご褒美をあげる。
⑦自分がもっと成長できることを知る。
⑧達成リストをつくる。
⑨かわいい動物の赤ちゃんの写真を見る」
最後、自らの一年間のプロジェクトを振り返って得たものをこのように述べて結んでいます。
「P. 289 AYOPを一年間やりつづけて、ぼくは、決して現状に満足しないこと、絶えず幸せなる道を探すこと、というかけがえのない考え方を得られた。生産性は幸せにつながる道じゃない。幸せになることが生産的になる鍵なのだ。自分にやさしくなればなるほど、あなたは生産的になり、生産的になるほど自分にやさしくなれる。」
書いてあることにそれほど大きな意外性はないかもしれません。
どれもこれまでも様々な分野でいわれていることです。
しかし実際に一つ一つを試してみてのまとめに、データを集めただけの論証とは異なる重さが感じられます。
そう、血の通ったメッセージがこの本には詰まっているのです。
10月から下期が始まったビジネスパーソンの皆さん、
上期が終わったこのタイミングで、一つ自らの生産性に意識を持っていきましょう。
振り返ってみて、さらに生産性を向上させる余地がないかをこの本からチェックして、より良い方法を学んでみるのもいいかもしれません。
ではでは、Keep Reading and Happy Reading!
以上
ご紹介本: