英・ベストセラー作家 アンソニー・ホロヴィッツとある修道僧の詩

アンソニー・ホロヴィッツというイギリスの作家がいる。

若者から大人まで幅広く支持されている作家で、ドラマの脚本や007やシャーロック・ホームズなど過去の作品のシリーズも手掛けており、現在、イギリスでもっとも成功した作家のひとりとされる。

日本でも2016年に刊行された推理小説『カササギ殺人事件』が、「このミステリーがすごい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」、「本格ミステリ・ベスト10」、「ミステリが読みたい!」 の各海外部門4冠を達成、2019年本屋大賞翻訳小説部門第1位も獲得、ととても高い評価を得ている。
お読みになった方も多いと思う。

私の書棚にも未読のものを含めて数冊、彼の作品がある。

さて、今日も『Writer's Routine』という作家のルーティンを紹介するポッドキャストを聴いていたところ、ゲストがホロヴィッツ氏であった。

毎日起きてから作品とどう向き合いながら執筆をするのかについて、いつもの早口で話していたのだが、インタビューの最後に、自らの仕事のスタンスを説明するのに紹介した詩が印象的だった。
大きな影響を受けたというスティービー・スミスによる一編。

"The Weak Monk" by Stevie Smith
(出典:https://www.babelmatrix.org/works/en/Smith,_Stevie-1902/The_Weak_Monk)

こちらに紹介する。簡単なあらすじはこんな感じ。

拙訳)
「あるところに一人の僧侶がいて、書斎で執筆を始めた。
テーマは『神と人について』。
彼は90歳になるまで書き、その後、金の留め金で本を閉じた。
そしてそれを羊小屋の下に埋めた。
そして思った。
この本はあまりに完璧で素晴らしいものなので、いつか神が地中から救い出すだろうと。
しかし、もちろん雪や雨を受け、その本は埋められたまま、朽ちてしまった。
僧侶が、神と人について書いたことを今では誰も知らない。
その咎は、僧侶にあり」

ホロヴィッツは、まさにこの僧侶になるのを一番避けたい、と述べていた。

つまり書いたものが完璧でなくても、やはりそれは書かれたからには、広く読まれないといけない。
自分だけが悦に入って、手元に温めておくだけでは世のためにはならない、それがどれほど完璧で崇高な出来だとしても。

文章を書くことが好きなすべての人に紹介したい一編だと思った。


原文)
"The Weak Monk" by Smith, Stevie

The monk sat in his den
He took the mighty pen
And wrote: ‘Of God and Men’.
One day the thought struck him
It was not according to Catholic doctrine,
His blood ran dim.

He wrote till he was ninety years old
Then he shut up the book with a clasp of gold
And buried it under the sheepfold.

He’d enjoyed it so much, he loved to plod,
And he thought he’d a right to expect that God
Would rescue his book alive from the sod.  

Of course it rotted in the snow and rain, 
No one will ever know now what he wrote of God and Men.

For this the monk is to blame. 




(カササギ)

P. S. アンソニー・ホロヴィッツについては、こちらでもいろいろと質問に答えてくれています。
https://www.booktopia.com.au/blog/2020/08/18/anthony-horowitz-answers-our-ten-terrifying-questions/

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