【本の話】『アーティストの手紙』
私は手書きの手紙に惹かれるものがあって、過去にもらったものもなかなか捨てられない。
でもそういう方は結構多いと思う。
自分以外の人によって書かれた手紙も好きで、特に過去の偉人や作家が残した手紙は大好物だ。
関連する本などは、これまでもかなり読んできたし、集めてきた。
たとえばフィッツジェラルドとヘミングウェイの書簡によるやりとり。
書籍にもなっているが、単純に読み物としてもおもしろい。
彼らが生きた時代背景なども伝わってくるし、二人の関係性が映し出される。
でもそれだけではない。
なんというか、お互いへの本当の感情や思いが、むしろ書かれていない行間からもにじみ出てきたりする。
今日ご紹介の一冊も手紙コレクションに加えたい一冊。
『アーティストの手紙』(マール社)
この本は過去500年の間に交わされた、世界中の芸術家たちの手紙を収めた一冊で、日常生活の報告や創造の苦悩、なかにはお金の無心といったものも収められいる。
書き手の体温が伝わる珠玉の作品になっている。
登場するアーティストもレジェンド級ばかり。
ダリ、ゴヤ、ミケランジェロ、クリムト、ピサロ、オノ・ヨーコ、ロダン、レンブラント、セザンヌ、ピカソ、ダビンチ・・・
読み進めていくと、印象派を代表する画家、ファン・ゴッホとポール・ゴーギャンのやりとりもあった。
1888年10月17日の手紙だ。
南仏・アルルに暮らすゴッホがゴーギャンに一緒に共同生活をするよう誘っている。
その際、自分の部屋の様子を、文章と簡単なスケッチで説明している。
そして、そのスケッチがそのまんま名画『ファンゴッホの寝室』(下絵)なのだ。
その名画の簡単なスケッチが、ゴーギャン宛の手紙に表現されていたという事実・・・。
調べてみると、この絵は同名の作品が3点存在するとのこと。
3点のうち最初のものは、ゴーギャンがアルルに来る直前の1888年10月に描かれたものだそうだ。
ということは、このお誘いの手紙を書いたころはきっとこの絵のことで頭がいっぱいだったのかもしれない。
読み込んでいくと、こんなこともわかってくる。
そうなると、もう興味が尽きないのであります。
よろしければチェックしてみください。
ご紹介の本: