視聴:対談『ウィズコロナを生きる 読書から学ぶ知恵』多和田葉子さん × 池澤夏樹さん
10月9日(金)に、それぞれ日本を代表する作家、多和田葉子さんと池澤夏樹さんの対談をNIKKEI CHANNELから視聴しました。
コロナ禍で、政治、社会の様々な面で変化が生じており、私たちの価値観もこれまでと同じでは対応しにくくなってきています。
ここからをどう生きるか、というのは今一番気になるところではないでしょうか。
人間の本質を学びたいとき、時代の先行きを見通したいとき、私は特に歴史や文学からそのヒントを得るのが好きです。
この対談からもたくさんヒントを頂きました。
今回は、登壇したお二人が読書を通じて得ることができるもの、社会の変容の理解に文学がどういう役割を持つのか、などフリーにお話しされています。
トピックは幅広く、小説、詩歌、母国語、電子書籍、執筆の秘訣、ノーベル賞、などなど。
大変、勉強になりました。
下記、特に勉強になったポイントを記載。(お二方のコメントは、自分のメモから)
Q:今、お二人のおすすめの本は?
池澤夏樹さん:
「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ
「パチンコ」 ミン・ジン リー
「オオカミに冬なし」クルト・リュートゲン
多和田葉子さん:
「丁庄の夢」閻連科
「カズイスチカ」森鴎外
「チェルノブイリの祈り」スベトラーナ・アレクシエービッチ
Q:読書術について
池澤夏樹さん:
つまらないと思ったらそこでやめていい。何年か経ってまた読んでもいい。その本とその人の読書の関係はいつもうまくいくとは限らないから。まずは開いてみる、そして止めていい。
多和田葉子さん:
今の読書の仕方と高校生のころとは読み方が違っている。昔はお腹が空いて空いて、いくらでも片っ端から読んでいく、という形だったが、今は行く先行く先で自分の本を読んだひとからおススメされる本を読むことが増えてきた。毎日10冊ずつを、少しずつ読んでみるといったことをしている。今は子供のころのように受け身で読むことはもうできない。すべてが栄養になっていくというのではなく、今は何を読んでも自分の考えと交錯する。私ならこう書くのになとか、オフェンシブな、自分が書くような能動的な読み方をしている。10分読んで次へ行く、というスタイル。
Q:小説・詩歌を作る上で、アドバイスは? 最初の一歩は?
多和田葉子さん:
最初は自分の人生の話を書きがちだけど、まずは自分と遠いところから始めてみる。自分とは関係ない分野で関心のあるものを調べてみて、そこから何かを書いていくといい。カブトムシでもいいし、フランス革命でもいいし、釣りでもいいし、なんでもよい。自分と直接関係のないところから始めるといい。自分のことを書くとひとりごとみたいに終わってしまう。なぜなら結局、最終的には自分の話になるから。まず、自分と離れたものを書くと、そこから自分に至るまでに大きな空間があり、そこの間で予想外のことが展開される。予想外のものが展開されないと、書くことの楽しみに行きつけない。遠くから始めて自分に戻ってくるイメージ。
池澤夏樹さん:
自分もまったく同じやり方でやってきた。自分のことは書かない。自分はだんだんと出てくるものだし。ただフィクションというのは戸惑いがある。なぜなら私たちは小さいころから、嘘をついてはいけないよ、といわれて育ってるから。フィクションには抵抗があるのだ。「彼は立ち上がって三歩歩いてみた」と書いても、彼はいないし三歩も存在しないから。そこを堪えて、嘘っぱちを承知でまずは先を書いてみる。そういうエネルギーが必要。ちょっとそれは万引きに似ているかも。最初は鉛筆一本かもしれないけど、僕たちみたいに長くやってると、車を一台盗めるようなイメージ (笑)。
気になった方は、ぜひ直接こちらから視聴してみてみてください!
https://channel.nikkei.co.jp/e/201009mojikatsuji